東京都独自の衛生基準
東京都では、他の道府県とは異なり、独自の高い衛生管理基準が求められる傾向にあります。
「特定建築物」はもちろん、それに該当しない「非特定建築物」であっても、法律で定められた努力義務に基づき、高い水準の衛生管理を維持することが重要です。これは、施設の安全性を確保し、行政からの指導や監査に適切に対応するためにも不可欠です。
このページでは、「建築物衛生法と特定建築物」「非特定建築物」について解説するとともに、複雑な東京都の衛生基準についてご説明します。
貴施設が法令を遵守し、利用者様に最高の安心・安全をご提供されるよう、当社がご支援いたします。
Ⅰ.建築物衛生法
建築物の衛生に関連する法律に、「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」、通称「建築物衛生法」または「ビル管理法」というものがあります。
この法律は、特定の用途・規模を持つ「特定建築物」の所有者等に対し、環境衛生上の基準に従った維持管理を義務付けています。
「特定建築物」とは、延床面積3,000㎡以上の学校や店舗、延床面積8,000㎡以上の事務所などが「特定建築物」と定義され、建築物環境衛生管理技術者の選任など厳格な法的義務が課せられます。
また法律は、都道府県知事への登録が可能な8つの事業区分を定めております。
これには、建築物清掃業、空気環境測定業、空気調和用ダクト清掃業、飲料水水質検査業、飲料水貯水槽清掃業、排水管清掃業、ねずみ・昆虫等防除業、そしてこれらを統括する建築物環境衛生総合管理業が含まれます。
Ⅱ.非特定建築物
特定建築物の定義に該当しない、非特定建築物の場合、何の対応もしなくてもいいわけではなく、法律上は多数の者が使用・利用するものについては、「建築物環境衛生管理基準に従って維持管理するよう努めなければならない」という努力義務が課せられております。
努力義務であるとはいえ、利用者様の中には免疫機能が低下している方もおられる病院や福祉施設にとって、衛生管理の不備は人命に関わる経営上の致命的リスクでもあります。
つまり非特定建築物の施設は、「法律で強制されるから」ではなく、「利用者様の安全を守るために、自主的かつ能動的に高いレベルの衛生管理を行わなければならない」という、より切実な状況であるといえます。
Ⅲ.東京都の衛生管理基準
東京都では、国の法律に加えて、独自の条例(例: 都民の健康と安全を確保する環境に関する条例など)や、より詳細な指導要綱を定め、東京都基準として実質的に求められる衛生管理の水準が、他道府県に比べて高くなる傾向があると言えます。
例えば、国の基準では排水槽の清掃は6ヶ月に1回以上とされておりますが、東京都では原則として年3回以上(負荷の高い場合はさらに多く)が指導されております。また、ねずみ等の生息状況点検も、国の半年に1回に対し、都では毎月1回の実施が求められております。
また、非特定建築物に対する衛生管理の「努力義務」は、国の法律に基づくものであり、法的拘束力という意味では、東京都であっても他道府県と変わりませんが、東京都独自の衛生管理基準に照らし合わせることで、やはり求められる水準が高くなる傾向があります。
これは、都市部の公衆衛生環境を維持するための東京都の取り組みの一環と考えられます。