省エネルギー技術
当社は、施設の「安全(衛生管理)」と「経営・効率(省エネルギー)」を、一つの統合されたシステムとして捉えておりますが、本ページでは「省エネルギー技術」にフォーカスし、また、その中でも特に病院・社会福祉施設に有用な、「エネルギーコスト削減の7つのポイント」と「具体的な省エネルギー手法」についてご説明いたします。
エネルギーコスト削減の7つのポイント
施設のエネルギーコスト削減を検討するに当たり、「エネルギー」と「実際のコスト」との基本的な関係や、削減の考え方の基本をおさえることで、目に見えないエネルギーとコストが、少し分かりやすくなります。
そして、削減の重要な点は、様々な条件下でどこまで目に見えない隠れた「無駄」を省けるかです。
これらのポイントを7つにまとめてみました。
[ポイント1]必ずしも、エネルギーコスト削減 = 省エネルギー ではありません。
省エネルギーやCO₂排出量削減を目指せば、必ずエネルギーコスト削減になるとは限りません。エネルギー自体と実際のコストの基本的な関係を理解することが大切です。ポイントは下記の通りです。
・電気代については、何らかの方策で従量電力を削減しても、最大需要電力が増加してしまっては、基本料金増額によってトータルコストが上がることがある。
・燃料転換を行い、省エネ・CO₂排出量削減となっても、電気代の仕組みや燃料単価変動の関係によって、トータルコストが上がることがある。
・LPガスは都市ガスと異なり、小売店によって個別の単価設定になっているため、エネルギーやCO₂排出量だけではコスト比較にはならず、エネルギー単価や機器のエネルギー消費量も含め検討しなければならない。
・電気、ガス、油にはそれぞれエネルギー及び対象機器の特性があり、安易な燃料転換は使用条件の激変や、場合によっては施設に適合せず、エネルギーコストにも跳ね返ってしまうことがある。
・再エネ由来の電力を購入しても、必ずしも電気代が下がるわけではない。
・新電力では市場変動型の場合、コストが上がる可能性があるため注意が必要。
・etc
[ポイント2]無理にフルリニューアルをする必要はありません。
補助金などを活用した、大規模なフルリニューアル(全面改修)は、あくまで最終手段です。フルリニューアルをするのは、設備などの更新がどうしても必要な場合です。その前に、検討しなければならないことが数多くあります。費用のかからない方策や、既設機器を活用した費用対効果の高い簡易改修、自動制御などのエネルギーマネジメントシステムなど、まずは費用対効果が高く、優先度の高い方策からの実施をおすすめいたします。
[ポイント3]何かを導入する場合、詳細なライフサイクルを考慮しなければ、費用対効果は分かりません。
何らかの機器などを導入される場合、導入~劣化~更新時期までに必要な整備費用などを考慮し、ライフサイクル全体を把握しなければ、本当の費用対効果は分かりません。表面的な効果や、単純な利回りだけでの判断はおすすめしません。法定耐用年数や実際の耐用年数は何年間で、またその間にかかる費用を詳細に把握することが必要です。
[ポイント4]必要な清掃・洗浄とメンテナンスを行う。
エネルギーを消費する設備は、メンテナンスフリーのものはほとんどありません。必要な箇所の清掃・洗浄やメンテナンスを行うことで、過度な負荷を回避します。メンテナンスの基本は清掃・洗浄です。専門業者が必要な場合が多いですが、スタッフで対応出来ることも多くあります。また、適切な清掃・洗浄を行うことで、良好な環境衛生を保持することも出来ます。
[ポイント5]日射や気候環境など外界からの影響を緩和させる。
日射や気候環境によって、建築物内の空調負荷を増加させたり、外周などに設置している機器を、過酷な状態にしてしまう可能性があります。それらは全てエネルギーコストや機器劣化に跳ね返ってしまいます。外界からの影響を出来る限り緩和させることが大切です。中・長期的にみた場合、劣化時のコストをどう考えていくか、予防保全をすべきかなど、経営方針も含め検討する必要があります。
[ポイント6]無駄な放熱やリークを防ぎ、無駄な熱や圧縮空気の生産を削減させる。
放熱や配管などからのリークを防ぐことで、無駄な熱や圧縮空気の供給をなくし、熱源などの稼働率を低減します。無駄な機器稼働をなくすことで、エネルギーコスト削減だけでなく、機器劣化速度を緩めることにもつながります。
[ポイント7]施設運営の条件に合わせて適正な機器の選定と、適正な機器稼働をさせる。
現在の施設運営の条件に合わせ、まず適正な機器を選定し設置することが必要です。その上で、自動制御やスタッフによる手動によってさらに条件に合わせた適正な機器稼働にし、無駄なエネルギー消費を削減します。結果的に、エネルギーコスト削減だけでなく、機器劣化速度を緩めることにもつながります。
具体的な省エネルギー手法
省エネルギーの具体的な手法は数多くありますが、その中で病院・社会福祉施設にとって有用なものを列挙してみましたので、ご参考にしていただければ幸いです。
当社ではこれらの省エネルギー技術を活用してまいります。
[エネルギーマネジメントシステム(EMS)]
・エネルギー利用の可視化と管理
・AIエネルギー解析
・エネルギー利用の可視化とオペレーション改善
・空気調和の自動制御
・温水・冷水管理による温水・冷水漏れ管理
・蒸気管理による蒸気漏れ管理
・圧縮空気管理による空気漏れ管理
・適正ではない稼働の機器の特定
・省エネルギーのデジタルサイネージ
[AIによるCO₂削減ロードマップ]
・「株式会社Green AI」様と協業で、AIによる最適な脱炭素ロードマップを策定します。
※株式会社Green AIホームページ:https://greenai.app/
[燃料転換]
・重油・灯油⇒電気
・重油・灯油⇒電気及び重油・灯油のハイブリッド
・重油・灯油⇒都市ガス・LPガス
・都市ガス・LPガス⇒電気
・都市ガス・LPガス⇒電気及び都市ガス・LPガスのハイブリッド
[空気調和]※全て季節性・時間帯・施設エリアなどを考慮
・スタッフによるON-OFFのマニュアル化
・空調機器単体の自動制御による適正稼働と最大需要電力の抑制
・運営上の適正な空調負荷の再設定と適正熱源の再選定
・空調システムの個別分散化
・高効率機器の導入
・既存配管・配線の再利用によるリニューアル
・蓄熱式空調システムの導入
・外気冷房制御の導入
・冷凍機・冷温水発生器等の負荷変動に応じた変流量制御
・冷凍機・冷温水発生器の冷却水・温水温度調節
・全熱交換器による排熱の有効利用
・デシカント空調による温度・湿度の個別適正化
・排熱利用によるデシカント空調システム
・空調冷温水配管・バルブ等における保温の改善
・冷却水の再利用システム
・排熱利用による排ガス吸収冷温水システム
・運営に応じた自然換気による稼働抑制
・スタッフによる必要最小限の換気運転
・湧水・井水等の空調利用
・ペリメータゾーンの空調負荷対応
・エアカーテンの導入
・冷媒撹拌による空調圧縮機負荷低減
・変圧器室の機械換気への改修
・屋内駐車場・機械室の環境基準に応じた換気量適正化
・サーキュレーターによる室内環境の均一化
・外気導入量の適正化による外気負荷抑制
・ショートサーキット回避のための設置改善
[ポンプ類]
・起動順序の検討による最大需要電力の削減
・インバータによる始動時損失の抑制
・適正流量の確認とバルブ改善
・ポンプのインバータ制御
・ポンプの台数制御
・排水処理設備の排水管損失の削減
・流量調整槽や接触曝気槽などのブロワーのインバータ制御
[送風機類]
・送風機類のインバータ制御
・送風機類のダンパ制御
・送風機類の台数制御
[給水]
・スタッフによる節水のマニュアル化
・水利用のマネジメントシステム導入
・節水シャワーヘッドの導入
[温水・蒸気・冷却水]
・必要給湯温度への調整
・運営上の適正な給湯負荷の再設定と適正熱源の再選定
・運営上の適正な給湯生成制御
・ヒートポンプ給湯器の導入
・蓄熱式ヒートポンプ給湯器の導入
・ボイラーとヒートポンプのハイブリッド給湯システム導入
・高効率給湯機器の導入
・潜熱回収型ガス給湯器や潜熱回収型ボイラーの導入
・排熱利用でのヒートポンプ効率向上
・排熱利用などによる給水温度の上昇
・循環ポンプ類の稼働条件の見直し
・ボイラー、タンクなどの保温改善
・冷温水配管・バルブ等における保温の改善
・蒸気回収・ドレン回収
・リハビリ用温水プールの自動制御
[廃熱回収・利用]
・温泉廃熱の利用(温泉街などのエリア特有の病院・社会福祉施設)
[遮熱・断熱等]
・建屋内断熱
・窓等からの熱侵入・熱放散防止:シリカ系塗装,Low-Eガラス
・空調室外機用の周辺遮熱
・空調室外機の遮熱・断熱塗装及びシート
・空調室外機への物理的な遮熱
・放射冷却シートによる室温抑制
・屋上,屋根の遮熱塗装
[医療ガス配管]
・配管からの酸素などガス漏れ箇所の特定、エア漏れ改善
[空気圧縮機]
・配管等からのエア漏れ箇所の特定,エア漏れ改善
・吸込み温度低減による仕事量削減
・吐出し圧力低減の検討
・配管の圧力損失改善
・排熱回収
・台数制御への変更
・設置位置の再検討
・空気圧縮機の分散化
[受変電設備]
・最大需要電力の管理と抑制
・受電電圧と契約電力の見直し
・高効率変圧器への更新
・進相コンデンサ設置による力率改善
・変圧器負荷容量の適正化
・変圧器の統合
・変圧器の均等負荷分散
[メンテナンス]
・空調室内機清掃・薬品洗浄
・空調設備におけるスケール除去剤での冷却水系の内部改善と熱交換率改善
・空調設備におけるダクト及びエアフィルタ類の清掃及び交換
・空調設備におけるチラー・AHU・FCUの適正整備
・エアコン類の適正整備
・温泉用水中ポンプ・温泉配管の定期整備及び更新(温泉街などのエリア特有の病院・社会福祉施設)
・各種ポンプ類・送風機類の適正整備
・ボイラー・空気圧縮機の適正整備
[電力契約]
・新電力への切り替え ※現状の市場変動型には注意が必要です
・再生可能エネルギー由来電力への切り替え ※エネルギーコスト削減となるかには注意が必要です
[照明]※全て季節性・時間帯・館内エリアなどを考慮
・スタッフによるON-OFFのマニュアル化 ※特に演出照明が重要です
・自然採光の利用:遮熱塗料の塗布を併せて実施
・スケジュール制御システムの導入
・LED照明の導入
・ソーラー蓄電式 足元灯の導入
・照度の適正化
・ゾーニングや運営に合わせた回路改善
・タスクアンビエント方式の導入
・サーカディアン制御の導入
・LEDの調光・調色による適正照明への意識向上
・LED除菌照明の導入 ※費用対効果は通常のLEDより低くなります
[コージェネレーション]
・マイクロコージェネレーション
[消防]
・蓄光式誘導灯
・高輝度蓄光テープ
省エネ実施による二次的効果の例
省エネルギー化と同時に、下記のような効果を得られることがあります。
結果的にこれらの二次的な効果も経営改善につながります。
・メンテナンスにより機器稼働の負荷が軽減されると同時に、機器の延命化につながる
・適正なメンテナンスによりライフサイクルコストが削減される
・外界からの影響を遮断することが、機器への負荷軽減となるとともに、機器の延命化につながる
・DX(エネルギーマネジメントシステムなど)により、エネルギーコスト削減とともに、スタッフのオペレーションにおける労力が軽減される
・etc